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The Last Game

私は今日、どちらを応援したら良いのか、迷っていた。
 

今日私達が見たのは、共にグループリーグ敗退が決まった
コート・ジ・ボワールとセルビア・モンテネグロの試合。

ワールドカップ的に言えば、死のC組の消化試合。
普通はオランダ対アルゼンチン見ますよね。
それで当然だと思います。

何でこっちの試合のチケットを取ったかって?

最初はただ単純に、ミュンヘンのスタジアムが見たかったんです。
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正直言うと。
対戦カードに大きな魅力があった訳じゃなくって。

 

それが、大きな意味を持つ、歴史的な試合になるなんて、
その時は思いもせず。

最初は、コート・ジ・ボワールを応援しようと思ってた。
大好きなアーセナルの選手がいて、そしてディディエ・ドログバ。

売り切れじゃなかったら、パリのスポーツショップで
コート・ジ・ボワールのユニフォームを買ってただろうし。

けど、試合が近づくにつれて、ひとつの事実が頭から離れなくなった。
自分にどう関係があるのかもわからないけど、気になって
仕方がなくなった。
 
 
 
「同じ旗の下で練習をした翌朝には国家がなくなっていた」
 
 

先日行われた国民投票によって、モンテネグロのセルビアからの
独立が宣言されたその後、セルビア・モンテネグロ・サッカー協会の
カラジッチ会長が記者に語った冗談だそうである。

冗談で言えるのは当事者だけですよね。

シチュエーションがわからないから笑えないけど、
すっごくすっごく大きな出来事なんだってことだけは、私にもわかる。
 
 
 
それがワールドカップ直前に起きた。
 
 
国民投票では独立賛成は55・5%だった。
EUが提案した独立条件の55%をかろうじて上回ったものの、
44.5%の人は反対だったのである。

いったいどんな気分なんだろう、選手たちは、国民たちは。

「国」や「国家」ってものに対してあまりにも固定的な概念しか
持ち合わせていない私には、想像もつかない状況。
 
 
モンテネグロ独立後には単独国家となるセルビアは、
8月16日に初めての試合となるチェコ戦を行うらしい。

サッカーにおいては、ワールドカップ終了後の7月末に正式に
分離独立が完了することになる。

そう、つまりは今日のこの試合が、セルビア・モンテネグロとしての
最後の国際試合である。
 
 
その意味を私が考えたところで何かができる訳じゃない。
 
 
けど、もしセルビアが勝ったら、セルビアとモンテネグロの両方の
サポーター達が一緒に喜べるのだ。
最後にひとつ、小さな想い出が作れるんだ。

そう思ったら、セルビア・モンテネグロを応援しようかなって思った。

けどそのすぐ後、そんな表面的な一時的な感情だけで応援するなんて
重大な局面に立つセルビア・モンテネグロ国民に失礼なのかな、って
思って迷ってしまった。
 
 
 
でも、応援することにした。
 
 
難しいことはよくわからないけど、自分も他の国の人が日本のジャージ
を着て応援してくれるのは嬉しかったから。
その理由が何であれ、ね。

それからホテルで会ったモンテネグロ人が、初めて会った日本人の私に、
「今日は最後の試合だ。歴史が終わるんだ。」と、笑顔で説明してくれた
のが大きかったかもしれない。
応援するのに理由なんていらないって気にさせられたような気がする。
 
 
 
試合開始前、最後の国家を聞いた後、席に着いた私たちの目の前には、
セルビア・モンテネグロの旗が並んでいた。
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サポーターの数では圧倒的に及ばなかったけど、彼らセルビア・モンテネグロ
サポーターは、他のどの国よりも男臭く、吠え続けていた。

私の後ろの席の2人も、例外ではなく。 
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試合には負けた。
応援したけど、負けた。
 
 
彼らの持ち味である堅い守備からのカウンターと相手のミスで2点を
先制したものの、退場者を出してからは受け身の時間が続いてしまった。

今日の彼らは決して冷静さを失っていたようには見られない。
むしろレフェリーが前半からデリケートになりすぎた結果演じられた、
「イエローカード・ショー」の犠牲となってしまった感は否めない。

もう少しだけ、11人のセルビア・モンテネグロが見たかった。

とは言えこれもサッカー。

デヤン・サビチェビッチやストイコビッチ、ミハイロビッチ、、、。
世界レベルのテクニシャンを数多く輩出しながら、すぐにキレてしまう
悪い癖から抜け出せず、頂点に立つことのできなかったあの国、
旧ユーゴスラビアの終焉には、ある意味ふさわしいのかもしれない。

けど、彼らはきっとまたそれぞれの国の個性を存分に発揮しながら
国際舞台に帰ってくるはず。
セルビアはセルビアのサッカーを、
モンテネグロはモンテネグロのサッカーを確立して。
クロアチアがそうであったように。

だからその時に、
「俺はセルビア・モンテネグロの最後の試合を応援した」
って言えるんだな、って思ったら、何だか楽しみになった。
 
 
そう思わせるのに十分なほど、両チームが自国の特徴を出し合った試合だった。
 
 
 
思えば最初にちゃんと見た90年のワールドカップで優勝したのは、
当時は統一前の西ドイツだった。

その時エースだったユルゲン・クリンスマンが自国開催の統一チームを
率いている。

そしてベルリンの壁が立っていた跡を観光している私がいる。

ワールドカップって、時間の重みとか、時が経つことで癒されることとか、
いろんなことが表現される場でもあるんだなって、今日強く感じた。

それは歴史的に大きな出来事があった時だけじゃなくって、
ワールドカップを楽しみにしているすべての人々が、それぞれの想い出を
つないでいくことで感じることができるのだと。

数多く居たコート・ジ・ボワールサポーターの誰と記念撮影しようかと
考えていた時、今日はこの人だなって思える人と出会えた。

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彼らにとってはアフリカ初開催。
自分の国じゃなくても、楽しみなんだよね。
そしてこのドイツでの想い出がきっと活かされるんだろうね、4年後に。

日本がどうとか、セルビアやモンテネグロがどうとかの理屈を抜きにして、
4年後が素直に楽しみです。
 
 
 

余談ですが、国際バレーボール連盟は、日本で開催される男女の世界選手権に、
分離独立が決まったセルビア・モンテネグロが単一チームとして出場すること
に決まったと発表したらしい。

男女とも単一チームとして出場権を獲得したことが重視されたらしいのですが、
こうやって徐々に徐々に国が分かれ、新しい国の歴史が始まっていくのだと、
少しだけ勉強になった夜でした。

※J-WAVE GMT ドイツ特派員ブログより抜粋

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